内田光子がラトルとモーツァルトのピアノ協奏曲第27番を演奏

内田光子は、ベルリン・フィルが特に緊密な関係を保っているピアニストと言えるでしょう。今回演奏されたのは、モーツァルトの白鳥の歌とでも呼ぶべき第27番。柔らかな色彩と枯淡なメランコリーに満ち、聴き手を憂愁の世界に誘います。内田の細やかなフレージングやタッチに魅了される演奏です。一方、ウォルトンのヴィオラ協奏曲では、ベルリン・フィルの第1ソロ・ヴィオラ奏者アミハイ・グロスがソロを聴かせます。同作は、バルトークと並んでヴィオラ・コンチェルトの傑作として知られています。プログラムの最後は、ラトルお得意の《ハーリ・ヤーノシュ》組曲。チェコ、モラヴィア、ハンガリーといった東欧(旧オーストリア領)の作品に傾倒する彼ならではの、色彩美に溢れる演奏となっています。

「私の印象では、モーツァルトの音楽のあらゆる音符は子供のような振る舞いを見せており、まったく予測がつきません」。ピアニストの内田光子は、あるインタビューでこのように語っています。日本に生まれ、ウィーンで育った内田は、中でもウィーン古典派の音楽に精通し、ベルリン・フィルと共演では30年以上に渡って卓越した解釈を披露してきました。サー・サイモン・ラトルとの今回の共演では、モーツァルトのピアノ協奏曲第27番を取り上げます。モーツァルトがこのジャンルの末尾を飾った作品であり、音楽素材の扱いは簡素でありながらも密度が濃く、円熟の境地にまで達しています。

協奏曲をもう1曲。英国の作曲家、ウィリアム・ウォルトンによるヴィオラ協奏曲です。この曲は1929年に著名なヴィオラ奏者、ライオネル・ターティスのために書かれましたが、彼は演奏を拒否し、ウォルトンを失望させました。結局、初演ではウォルトンのドイツ人の同僚で、自身ヴィオラ奏者だったパウル・ヒンデミットが務めることになります。今回は、2010年からベルリン・フィルの第1ソロ奏者を務めるアミハイ・グロスの演奏でお楽しみください。

コンサートを締めくくるのはコダーイの《ハーリ・ヤーノシュ》組曲。同名のジングシュピーゲルからコダーイが6曲を選んで編纂したものです。ドイツのほら吹き男爵とも比較されるナポレオン戦争の退役軍人、ハーリ・ヤーノシュの冒険談をもとに、コダーイは皮肉とユーモアを散りばめながら滑稽な戦闘の音楽や愉快な葬送行進曲を書き上げ、ハンガリーの民俗音楽も引用しました。さまざまな音楽が混ざり合ったこの作品によって、コダーイは国際的な名声を獲得することになったのです。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
サー・サイモン・ラトル
内田光子
アミハイ・グロス

© 2017 Berlin Phil Media GmbH

関連インタビュー

アーティスト

サー・サイモン・ラトル 首席指揮者 (在任期間 2002-2018)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト 作曲
内田光子 ピアノ
ウィリアム・ウォルトン 作曲
アミハイ・グロス ヴィオラ
ゾルターン・コダーイ 作曲

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