意外な超名演!ティーレマンのフォーレ「レクイエム」

ドイツ後期ロマン派の演奏で名高いクリスティアン・ティーレマンが、フランス音楽のプロを振りました。意外な組み合わせと思いきや、大変な名演となっています。ショーソン《愛と海の詩》(独唱:ソフィ・コッシュ)は、ワーグナー的な濃厚な色彩感はもちろん、繊細な和声の移ろいにも鋭敏に反応。ベルリン・フィル・ハープ奏者マリ=ピエール・ラングラメとの《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》の芳醇な響きも見事ですが、圧巻はフォーレの「レクイエム」でしょう。驚くほどシンプルで、ティーレマン的物々しさとはまったく異なった世界が現前しています。

「あなたのピエ・イエズは、モーツァルトのアヴェ・ヴェルムと同じように唯一無二の存在です」。1916年、サン=サーンスは弟子のフォーレにこう書き記しました。ここで指しているのは、フォーレが1888年に初演した自作のレクイエムの中にあるソプラノ独唱曲のこと。音楽史の中でも異彩を放つこの美しい「死者のためのミサ曲」について、フォーレ自身はこう語っています。「私のレクイエムは、死に対する恐怖感を表現していないと言われており、なかにはこの曲を死の子守歌と呼んだ人もいます。しかし、私には、死はそのように感じられるのであり、それは苦しみというより、むしろ永遠の至福の喜びに満ちた開放感に他なりません。私は非常に長い間、葬儀でのオルガン伴奏を勤めたので、直感的に何か違うものを作ろうと思ったのかもしれません」。

クリスティアン・ティーレマンが指揮する今回の演奏会では、慰みに満ちたフォーレのレクイエムに対してショーソン作曲の《愛と海の詩》が置かれます。作曲家の友人だったモーリス・プショールの詩をもとに書かれたこの作品は、形式上は連作歌曲とカンタータの中間に位置づけられます。1882年から1890年までの作曲期間は、ショーソンが初めてバイロイト音楽祭を訪れ、ワーグナーの音楽に強い影響を受けていた時期と重なります。それだけに、ワーグナーのスペシャリストであるティーレマンが、この作品をどのように解釈するか大きな聴きものです。もう1曲は、ドビュッシーの《神聖な舞曲と世俗的な舞曲》。デジタル・コンサートホールでしか聴けないティーレマンのフランス・プロをぜひお楽しみください。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
クリスティアン・ティーレマン
ソフィ・コッシュ
マリー=ピエール・ラングラメ
ベルリン放送合唱団
クリスティアーネ・カルク
アドリアン・エレート

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アーティスト

クリスティアン・ティーレマン 指揮
エルネスト・ショーソン 作曲
ソフィ・コッシュ メゾソプラノ
クロード・ドビュッシー 作曲
マリー=ピエール・ラングラメ ハープ
ベルリン放送合唱団
クリスティアーネ・カルク ソプラノ
ガブリエル・フォーレ 作曲

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