インタビュー
サー・サイモン・ラトル、《トリスタンとイゾルデ》について語る
1865年にミュンヘンで初演された《トリスタンとイゾルデ》を、ワーグナーは単に「3幕の劇進行」と名付けました。それは起こる出来事が目立って少ないこの作品を逆説的に指してのことでした。幕が上がる前の出来事として、トリスタンはかつてイゾルデの婚約者を殺害していました。彼はアイルランドの王女であるイゾルデを嫁ぎ先のマルケ王のもとに送り届けるという不吉な任務を任され、その過程で主人公2人の内面の葛藤が描かれます(第1幕)。第2幕では愛の薬で恋に落ちた2人が愛の喜びに浸り、陶酔的な音楽が支配。そして第3幕では、トリスタンがマルケ王の家臣メロートにより重唱を負わされ、朦朧とする中、従僕のクルヴェナールがトリスタンを見守ります。やがて、イゾルデは遅れてトリスタンの元に駆けつけるのでした……。
官能と陶酔の世界に溢れながらも、同時にこの上なく静謐な《トリスタン》こそ、演奏会形式上演でじっくり耳を傾けるにふさわしい作品と言えます。ワーグナーの豊麗な響きをご堪能ください。
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