ヘルベルト・フォン・カラヤン
首席指揮者 (在任期間 1956-1989)ヘルベルト・フォン・カラヤンが人々を魅了した芸術上のコンセプトは、フルトヴェングラーの主観的な表現意欲と、トスカニーニに見られる厳しい客観性とを結びつけることだった。またカラヤンの音楽には、対極的なものが共存し合っていた。つまり、豊穣な響きと透明性、音の美しさと正確なアーティキュレーションといったものである。
カラヤンはそのような稀有な存在でありながら、同時にまた20世紀の音楽世界に生まれるべくして生まれた。アドルノは彼を「奇跡的な経済復興の天才」と呼んだが、確かにカラヤンは膨大な数のレコードを売り、音響技術の発展に積極的に貢献した。その一方で、彼は偉大な音楽作品には謙虚な姿勢を示し、若き頃、小都市ウルムとアーヘンの歌劇場で研鑽を積み始めた。ベートーヴェンやR・シュトラウス、ワーグナーを得意としたが、オペラからコンサートまでそのレパートリーの広さは比類がない。フランスの近代や新ヴィーン楽派の作品でも、決定的な録音を残している。 ベルリン・フィルの首席指揮者時代の功績としては、ザルツブルク・イースター音楽祭の創設や、彼の理念が反映されたハンス・シャロウンの設計によるフィルハーモニーの完成などが挙げられる。晩年はオーケストラとの間で不和が生まれ、死の数ヶ月前にその職を辞任することとなる。しかし、30年以上に及んだカラヤン時代のベルリン・フィルは膨大な成果を生み、音楽解釈の歴史において現在に到るまで大きな影響を及ぼしている。