ラトルがワーグナーの《ワルキューレ》第1幕を指揮
ワーグナーの《ワルキューレ》第1幕は、コンサート形式オペラの定番ですが、ここではサー・サイモン・ラトルの指揮、エーファ=マリア・ウェストブレーク(ジークリンデ)、サイモン・オニール(ジークムント)、ジョン・トムリンソン(フンディング)という豪華キャストでお届けします。前半の曲目は、同じく《ニーべルングの指環》のモチーフを用いた「ジークフリート牧歌」。ラトルがこの曲をベルリン・フィルで指揮するのは、今回が初めてでした。
ワーグナーは1870年にミュンヘン宮廷歌劇場で《ワルキューレ》全曲を初演していますが、実はそれ以前にも第1幕をコンサート形式で上演しています。それは1856年、当時彼が住んでいたチューリヒのことで、ワーグナーは自宅で数少ない観客のためにピアノ伴奏でこの幕を取り上げたのでした。その際、ジークムントとフンディングを歌ったのは、ほかならぬ作曲家自身だったのです。この演奏会は、圧倒的な成功を収め、同年の10月22日には、ホテル・バウアー・オー・ラック(現在も存在するチューリヒ随一の高級ホテル)で、アンコール上演されています。『チューリヒ新報』は作品を「未来の芸術」と激賞し、「これは単なる夢見事ではなく、現実の一歩である。今後の音楽界に揺さぶりをかけるだろう」と予言しています。その言葉が成就したことは、言うまでもありません。
今回の上演では、現代における第1線のワーグナー歌手たちの歌をお楽しみいただけます。エヴァ=マリア・ウェストブレークは、ジークリンデをバイロイト音楽祭へのデビューで歌い、絶賛を受けました。ジークムントのサイモン・オニールは、同音楽祭でパルジファルとローエングリンを演じています。またフンディングに扮するジョン・トムリンソンは、バイロイトのヴォータンとして10年以上にわたって活躍しました。
前半に演奏される《ジークフリート牧歌》は、1870年にコジマ夫人の誕生祝いとして書かれた作品で、平安と優しさに満ち溢れています。作品のモチーフは、《ジークフリート》から引用され、英雄の無邪気な幼年時代を暗示しています。
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