ラトルがブルックナー「第9」第4楽章補筆完成版を指揮!
サー・サイモン・ラトルが、ブルックナー「交響曲第9番」の第4楽章補筆完成版(サマーレ、フィリップス、コールス、マッズーカによる完成版)を指揮しました。最新の研究の結果が生かされたクリティカル・エディションによる演奏であり、ブルックナー・ファンには必聴のプログラム。2011/12年シーズン最大の話題のひとつです。
ブルックナーの「交響曲第9番」は、未完の大作として知られています。この曲は、2011年11月のアジア・ツアーでも取り上げられましたが、その際は、通常通り第1~3楽章が演奏されました。これに対し今回の演奏会では、終楽章付きの「補筆完成版」が上演されました。
ブルックナーは、死の直前までこの作品に携わり、1896年に死去した時には、第4楽章を作曲している途中でした。残されたスケッチを元に完成が試みられ、これまでにも複数の完成版が発表されています。今回使用された「サマーレ、フィリップス、コールス、マッズーカ版」は、そのなかでも最も学究性が高いクリティカル・エディション。4人の音楽学者・作曲家が25年以上の歳月をかけて復元し、2010年にさらに改訂が行なわれました。
「交響曲第9番」は、ブルックナーの辞世の句と言われますが、彼は作品を「愛する神に」捧げました。第1楽章は生からの決別を暗示し、続くスケルツォは不吉な死の踊りを連想させます。第3楽章アダージョは深い憂愁と同時に、破滅的なカタストロフも内包しています。補筆版の終楽章は計647小節に至り、そのうち208小節は、ブルックナーにより完全に作曲されています。これに個々の弦楽パート、管楽器のスケッチが加わりますが、37小節分のみが研究者の純粋な創作です。完成されたスコアは、ブルックナーの偉大さを示す一方で、やや奇異な印象を与えるでしょう。しかしラトルは、次のように語っています。「このフィナーレで奇妙な個所は、すべてブルックナー自身の手によるものです。ここには、彼が当時体験した脅威、恐れ、感情のすべてが現われているのです」
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