カラヤン指揮:ベートーヴェン《田園》(1967年制作)
フーゴー・ニーベリングによる前衛的な手法を用いた《田園》は、カラヤンの映像作品のなかでも最も特異なものに数えられます。演奏は、1967年にベルリンのイエス・キリスト教会で収録。凝った映像と自然で練りあがった演奏のギャップが、面白い作品と言えるでしょう。
1967年に制作されたこの《田園》の音声は、ベルリンのイエス・キリスト教会で収録されました。そして映像は、著名な前衛映画監督フーゴー・ニーベリングによりベルリンのアルトゥール・ブラウナーCCCスタジオで撮影されています。ニーベリングはここで、表現主義的映画の手法を用い、抽象的でゆがめられたカット、ブラック・ライトを織り込みました。出来上がった映像は議論を呼び、批判も浴びています。多くの評者が、この映像は《田園》よりもシェーンベルクの《浄夜》に相応しい性格のものだと感じたからです。カラヤン自身も結果に完全に満足していませんでしたが、それでもニーベリングを引き続き《英雄》と交響曲第7番の撮影に起用。そちらは今日でも高く評価されています。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン
© 1968 Unitel