カラヤン指揮:ベートーヴェン《運命》(1966年制作/インタビュー・リハーサル・本番)
アンリ=ジョルジュ・クルゾー監督のこの映像では、カラヤンの指揮の極意が紹介されています。カラヤンは《運命》の全曲を指揮しているだけでなく、リハーサルと音楽解釈の方法を説明しているのです。カラヤンの仕事部屋を垣間見る思いです。
60年代の中頃、カラヤンはフランスの有名映画監督アンリ・ジョルジュ=クルゾーと、『指揮の芸術』という名の音楽ドキュメンタリーを制作しました。カラヤンはこのシリーズによって、指揮者とオーケストラ団員の仕事を、人々に説明しようと試みたのです。
これを実現するために、彼は様々な方法を試みています。シューマンの回では、リハーサルの模様とコンサート映像を組み合わせ、ドヴォルザークの回では、リハーサルの代わりに音楽評論家ヨアヒム・カイザーとの対話を収録させました。このベートーヴェンの映像では、《運命》の第2楽章を指揮の学生と共にリハーサルしています。その際カラヤンは、「どのように指揮するかは教えることはできないが、コンサートで一生懸命指揮しなくて済むようにリハーサルをする方法は教えることはできる」と言っています。
カラヤンは、言葉によってあるイメージや想念を生み出し、それによって音楽の本質に迫ることができる、と確信していました。同時に演奏家は、実際の音を出す前に、どのような響きを作りたいのかイメージを持たなければならない、とも考えていました。そのイメージがあれば、手はおのずと動くというわけです。もちろんカラヤンは、指揮の学生は作品のあらゆるディティールを知り尽くしていなければならないことも前提としていました。
1966年の《運命》の解釈は、集中力に満ち、ベルリン・フィル特有の活力を発散しています。
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン
© 1966 Unitel